入れ直さなきゃの脳内リピートが止まらない。アルバム町を見下ろす丘を聴きました

新しいものから遡り方式にてオリジナルアルバムの感想を書く事、6作目。

これまた大変難産でございました。

やっと東芝EMI期に突入です。

STARTINGOVERが商業的にやったるでー!という大人数の勢いに包まれているアルバムだとしてこの町を見下ろす丘の静けさは、非常に対照的。

私はアルバムを聴くときに、とりあえず何の前情報も持たずに聴くようにしております。

今回私があらかじめ知っていたのは二つだけ。これが東芝EMI最後の作品であることと、佐久間正英さんのプロデュースであるということ。

とにかくバンドとしてのサウンドに聴きほれました。

ある意味、エレカシというバンドの完成形を見たような、そんな気すらする音でした。

ベストアルバムの中に東芝EMI期を集めたものがあるようですが、その副題は胎動期。

誰がつけたんだろう、なんと上手いことを。

妊娠を経験したことのある女性ならわかると思うのですが、この胎動というのは人として産まれ出でる前の不思議なエネルギーを凝縮したかのような生命力を感じる瞬間であり、このアルバムはおそらくその胎動と名づけるにふさわしい、新しい世界に生まれ出る直前の状態だったのではないかと思います。

歌詞は全体的に刹那的であり、今この瞬間燃え尽きんがために歌う、といったような印象を大いにうけます。

一曲目から敗れゆく卑屈な笑顔という言葉が出てくるし、地元のダンナ

やってくる朝にほだされてああ俺は今日も働くが理想の朝朝にほだされてという表現が秀逸。

三曲目に至っては曲名がすでに甘き絶望。ここに出てくる光は、あまりにも淡くたよりない。そして絶望というものは、確かに甘きものであると私も思う。

19回という異常なまでの探すという言葉を頻出。今あるこの自分が俺の全てだなんて思ひたくはなかった。すまねえ魂

ここまでの四曲で、相当ダメージをくらった私ですが、次のシングルカットとなったシグナルがまた苦しくて苦しくて。

RCサクセションの歌にいい事ばかりはありゃしないという曲があります。

何も変わっちゃいないことに気がついて坂の途中で立ち止まるという歌詞があるのですが、このシグナルに出てくる町を見下ろす丘で立ち止まる情景が、非常にこの曲と重なるものを感じました。

今さらどこへにげるのさ?と問いかけ、道半ばに命燃やし尽くす、といった幕末の志士のような言葉が続き、しかし最後にどの道俺はで終わります。

なんて苦しい歌なんだろうと思っていたのですが、シングル愛すべき今日のボーナストラックに入っていた2015年の新春ライブの音源のシグナルは、これとは全く違ったものとなっていました。もちろん歌詞やアレンジの違いを言っているのではなく、今はもうまよはずに行けるさ心の花咲かせる人であれよとといった、力強い歌詞の方が断然響いて聴こえてくるのです。すごく不思議。一番の違いは、一番最後のどの道俺はの後、ほんのちょっとしたアレンジを宮本さんが加えるのです。そのほんのちょっとの音が明らかにこの曲が未来への明るいシグナルに変化していると私は感じました。

夢も希望もいらねえよとりあへず行け今をかきならせ今をかきならせという非常に勢いのある刹那的な曲に続き、私の今回のアルバムでの悶絶ポイントを持つ人生の午後にに突入。

とにかく気怠いメロディー。野望は疲れ果ててる夢にゃあ傷が付いている。つまらないよ全部全部色あせて見えるから。

自分の人生から鳥が飛び立つがごとく、いろいろなものが離れていってしまうような、しかしそれを追いかける気力すら感じられないこの曲。

この曲のちょうど中間のあたりに

さっきいれたお茶がもう冷めてしまったという歌詞があります。そしてその直後に入れ直さなきゃという囁きが入っているのです。

まあ、悶絶いたしました。何度もこのセリフを聴きなおしました。入れ直さなきゃと言っておいて、きっとまた窓の外を見つめるだけの日を送る、そんな情景が浮かぶこの曲。個人的に大変好きです。

やっと外に出たかと思うと、外は雨。そして僕は道に迷ってる。カラスが一羽アホウとないて飛んだ。傷だらけの旅人。雨の日に

曲調が明るくなるのが、次の流れ星のやうな人生なのですが、これも流れ星落ちるものですからね、夜空の向こうには辿り着けないと歌っています。

最後に今の自分を信じてみなよ流れ星のやうな人生と繰り返されるのです。

Idontknowたゆまずにも、とびらを開けりゃ外は雨模様。しかし曲の後半では、とびらをあけりゃあ外は晴れた空に変わっているのです。

おそれずにたゆまずに。

最後の曲、ここでも丘の上から町を見下ろす情景が出てきます。なぜだか俺は?ってゐた、と。なぜだか、俺は?っていた

町を見下ろす丘というものは、比喩なのか実際に宮本さんが見てきた風景なのか。

私はそのどちらでもあるのかな、と思って聴きました。

歌詞が非常に苦悩に満ちているにも関わらず、サウンドが変に暗くなりすぎない、むしろ楽器の音が活き活きと聴こえてくるのがこのアルバムの面白さだと思います。

東芝EMI期、他の作品もかなり期待しちゃいます!

町を見下ろす丘3146円

Amazon