「政府にもの申せぬ日銀になっている」 先月退任した木内元審議委員

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201708/CK2017080902000140.html

 七月に日銀政策委員会の審議委員として五年間の任期を終えた木内登英(たかひで)野村総研エグゼクティブ・エコノミスト(53)=写真=は本紙のインタビューで、「日銀が政府に対してものを申せない状況になっている。何とかした方がいい」との考えを示した。日銀は安倍政権の意向を受けて今の金融緩和を始めたが、「政府との距離感が適切だったかには疑問がある」とも述べた。

 日銀は二〇一三年四月に大規模な金融緩和を開始。木内氏は安倍政権発足前に就任した最後の審議委員の一人として、黒田東彦(はるひこ)総裁率いる執行部の方針に反対を続けてきた。現政権が任命した委員は執行部の方針にすべて賛成しており、政府との距離感を失った「総与党化」が指摘されている。

 木内氏は「政府が短期の政策効果を求めても中央銀行は同調せず、副作用に配慮した長い視野を持つべきだ。しかし実際には副作用への配慮が足りずに将来のリスクが積み上がってしまった」と現状を説明する。加えて「政府と意思疎通をして意見を言い合えればいいが、そうはなっていない」との見方を示した。

 副作用の内容としては、日銀の財務悪化や極端なインフレの発生などの可能性を挙げ、「国民負担を伴うさまざまなリスクがある」と強調した。

 現政権が任命した審議委員が増えるにつれて議論の多様性が失われたかを問われると、「守秘義務がある」と具体的な言及こそしなかったが、「議論の質は必ずしも良い方向には向かわなかった」と実感を吐露した。 (渥美龍太)

<きうち・たかひで> 1987年早大政経学部卒業後、野村総研入社。野村証券チーフエコノミストなどを経て2012年から日銀政策委員会の審議委員。17年7月に退任し、野村総研のエグゼクティブ・エコノミストに就任した。千葉県出身。